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皮革の話
−皮から革へ−
皮から革へ原皮の種類なめし方法製法皮革の性質取扱いと手入れ

 原始の昔から人にとって皮革は生活の必需品としてなくてはならないものでした。
特に狩猟を生活の糧としていた西欧の人々にとっては衣食住すべてに皮革は欠かせないものでした。
 それ故、ヨーロッパ・中近東に於いて皮革産業の歴史は古く又発展したのです。
 東洋、特に日本では農耕を中心とした生活であったため皮革産業の歴史は新しく明治維新以後でありました。
 現在では西欧の技術に遜色ないものに技術も進んでいますが、皮革製品というとイタリー、ドイツなどと云われるのはこの様な歴史的背景がある由です。
 今日では皮革の技術をはじめ製品の製造技術、デザイン力などにおいても、むしろ西欧を凌ぐものも多々出来ています。

皮から革へ=skin〜Leather
 古くは生皮を天日で乾燥させて保存性をもたせて使っていましたが、固くて使いずらい、腐り易いなど難点が多かったと想像されます。
 何とか柔らかく、しかも保存性の良いものにと、色々工夫する中で、木の実や皮(樹皮)からとれる「渋=シブ」を使って加工することを覚えたのではないかと思われます。この木の皮や実からとれる「渋」、これをタンニンと現在は呼んでいますが、このタンニンで皮を加工することを「鞣(なめ)す」と云います。英語でタン(=tan)、タンナー=鞣製する人、会社(=tanner)、薄茶色ののことをタン(=tan)と云います。

 皮はコラーゲン繊維(蛋白質)と云う生糸によく似た繊維が集合してできていますが、生皮=皮の段階では、その他に色々な有機物が含まれています。この有機物を除去してコラーゲン繊維だけの組織に加工されたものが「革」となります。
この工程に「渋」=タンニンが使われます。
タンニンはかしの木の皮やその他植物のシブなどから抽出されます。
このタンニンで鞣すことをタンニン鞣しと云います。
近代産業の発達とともにドイツを中心に天然のタンニンではなく化学製品であるクローム酸を使って、より効率的にコラーゲン繊維とクローム酸を結合させる鞣し法が開発されました。これがクローム鞣しと云われているもので、現在の鞣製の主流となっています。
昨今は、また、エコロジー思想のひろがりから、タンニン鞣しが見なおされ、イタリーを中心にヨーロッパではヴェジタブル鞣しとして脚光をあびています。
 
皮革は天然の織物
−コラーゲン繊維−

 この世の動植物が神の創造物とすれば、皮革はまさに神の創造した織物と云えます。
皮革を形成しているのはコラーゲン繊維(人をはじめあらゆる動物の皮はこのコラーゲン繊維)です。
コラーゲン繊維は細く半透明の白い美しい生糸のような繊維です。
皮革はコラーゲン繊維が無限に長いフィラメント状で、これが無数に集まって繊維束となり、この繊維束が立体的に多方向ランダムに絡み合って人工的にはとても考えられない構造でできています。
この構造が、合成皮革では真似ることが出来ない皮革独特の伸縮性や通気性などの性質を生みだしているのです。
コラーゲンは蛋白質と云う特質から、現代では人工皮膚や化粧品、薬品、手術時の縫合糸など幅広く利用が拡がっています。
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原皮の種類と特長
 皮の中では牛皮が最も多く一般的に使われています。
 その80%以上は輸入に頼っており、主に北米・オーストラリアで、その他ヨーロッパ・ニュージーランドなどから輸入されています。

 牛皮の種類
カーフ 生後約6ヶ月以内のもの=表皮(銀面)のキメと繊維組織が最も細く手触り等あらゆる面で最高品質のもの。
キップ 生後約1年以内のもの=カーフよりやや厚めですが、カーフより丈夫で表皮も美しく使い易い上質の皮。
カウ 生後約2年の牝の成牛=2歳以上を成牛と云い上記2種と比べて表皮は少し荒くなりますが丈夫。
ステアー 生後3〜6ヶ月に去勢した牡の成牛=牛皮の中で最も良く使用されているもの。
ブル 生後3年以上の牡の成牛=皮が最も厚く、繊維組織も荒い。丈夫な厚ものに向きます。靴の底革など。
地生 国内産の牛皮=成牛が多く、輸入皮よりキメが細かく上質だが、やや肉厚が薄い。
 その他の皮の種類と特長
 その他の皮の種類
ピッグスキン 豚皮で非常に丈夫。少し固いのが特徴。
ペッカリー 野生の猪の一種で、南米・ヨーロッパの山や森で生息。柔らかく肉厚で高級品。特に手袋に向く。
キット 子山羊皮でキメが細かく最上質のものです。手袋・靴・小物類に向く。
ゴート 山羊皮で、軽くソフトな感触が好まれる。衣服・手袋・小物向き。
ラム 子羊で柔らかくソフト。衣類・手袋・小物向き。
馬皮 馬皮は銀面が摩擦に弱いがソフトで丈夫。
コードバン 馬の尻の部分で、繊維が緻密で光沢が美しく丈夫。
カンガルー しなやかで軽く丈夫です。肉厚が薄いのが特徴。競技用スパイクなど。
オーストリッチ 駝鳥の皮で羽根跡の模様が珍重されています。
セーム革 小鹿の皮を油鞣しで仕上げたソフトなもの。水洗いも出来る。
ハ虫類 ワニ・トカゲ・ヘビ・カメ等の動物の皮で、それぞれの独特の模様が好まれてます。
アニマル 俗称で、上記以外の珍しい動物。例えばゾウ、カモシカ、カバ等色々ですが、最近はワシントン条約による捕獲禁止や輸入禁止等により入荷するものは殆どない。
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鞣し方法による皮革の特徴
 タンニン鞣し
・切り口が茶褐色
・型崩れせず丈夫
・成型し易い(皮革工芸など)
・染色し易い(染料の吸収がよい)
・吸湿性に富む
・使い込むほど艶やなじみが出る
 
エコロジーの潮流からこの植物の渋(シブ)=タンニンを使った鞣し方法が見直されて一つの流れになってきています。
欧米ではベジタブルタンニングとして好んで使われています。
 クローム鞣し
・切り口が青白色
・伸縮性が良い
・柔軟でソフト感がある
・比較的、熱に強い(タンニン鞣しに比べて)
・吸水性が少ない。水をはじく。
・耐久力がある。
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製法(加工・仕上げ)による皮革の種類
 銀付革(ギンツキガワ)
 一般的な皮革はこのタイプに属するものが多い。
クローム鞣又はタンニン鞣しの革に染色したもので革の風合いを失わないように染め上げたものです。
銀面(表皮のこと)は美しくしなやかで耐久性、通気性に優れ、その機能性は合成皮革とは比較になりません。
アニリン染料で色付けをし、グレージングと云ってガラス玉で磨き艶を出したものが代表的なものです。
光沢を抑えたマット仕上げ、銀面を揉んで仕上げ、その皮の独特のシワ(シボ)を出したもの(揉み皮)があります
 
 ガラス張り革
 銀面をサンドペーパーですり落としてから樹脂系塗料を塗布して仕上げたものです。
仕上げ工程の乾燥を平らなガラス板に張って仕上げる事からこの呼び名があります。
仕上がりは光輝のあるガラス面の様ななめらかで美しい光輝があります。
 
 シュリンクレザー
 なめしの工程の中で、特殊薬品により皮の表面を縮めてシュリンクさせる、その皮独特のシボ(シワ模様)を作ります。
しなやかで自然の革らしさを出した革です。
 
 パテントレザー(エナメル革)
 皮の表面に合成樹脂膜を厚く塗布して漆のような艶を出した美しい皮で、手入れが簡単で広く愛用されています。
 
 スエード
 革の表面をペーパーで「バフ」し、ベルベットのように起毛させた革です。
 
 ヌーバック
 銀面(表皮)をサンドペーパーで軽くこすって起毛させ鹿皮のバックスキンに似せたものです。
 
 ベロアー
 繊維組織の荒い革をスエード調に仕上げたもので毛足が長めです。成牛皮が主に使われる。
 
 型押革(エンボスドレザー)
 銀面に変化を持たせるために加熱高圧プレスで型を押して加工したものです。
精密な金型の製造技術が向上して、ワニ皮の模様でも実物に忠実に再現出来るようになっています。
 
 床革
 厚い革を普通2枚から3枚にすきます。一番上の銀面以外のものを床革といいます。
比較的安価で色々な利用法があります。
 
 ぬめ革・多脂革(たしかわ)(=オイルレザー)
 タンニン鞣の一種で、鞣す前に酵素を使って皮の組織をほぐし、薄いタンニン液で鞣した、柔軟性のある革。
ベルト、袋物、ロウケツ染め、手芸用に使われます。ぬめ革より多くく脂を加えたものを多脂革と云い、非常に丈夫な革となります。
一般にオイルタン(又はオイルレザー)と呼ばれ工業用や馬具、ベルト、バッグなどに使われます。
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皮革は呼吸する−皮革の性質−
「革は自然がつくり出した最高の織物」
顕微鏡で観察すると、沢山の良い繊維(コラーゲン)が
集まり、撚りのかからない状態で、複雑に絡み合っています。
これが革の伸縮する秘密で、革や衣服には欠かせない条件の一つです。
自然の環境の中で動物の身体を包み、保護する皮は鞣めして人間が使用
しても熱を遮ったり、水をはじいたり、怪我のないように護ってくれるのです。
 皮革の性質
長所
1.通気性がある
2.吸水性がある
3.吸湿性がある
4.保水性がある
5.伸縮性がある
6.弾力性がある

短所
1.熱に弱い(70〜80度で収縮する)
2.濡れると固くなる
3.カビが生え易い
4.サイズ・厚みが一定でない
 
 私達の足から、一日にコップ一杯分程の汗が出ると云われています。
でも、一日中革靴をはいていても、靴の中にはそれ程の水分は見当たりません。
それは革が汗を吸いとり、同時に外へ発散させているからです。
吸湿・放湿あるいは通気性と云う、革独特の性質によるところです。まさに「革は呼吸している」からです。
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皮革製品の取り扱いと手入法
一般に皮革は水に弱いと考えられていますが、皮から革に加工され(鞣製)ていく工程の大半はほとんど水びたしの状態で染色工程が終わってはじめて乾燥され水分がなくなって仕上げられて行きます。
ですから濡らさない方がよりベターではありますが、濡れたからダメと云うことはありません。
むしろ濡らしたあとのケアー(お手入れ)が大切です。

 お手入れの方法
1.水や雨に濡らした場合は、まず陰干して下さい。
直射日光や暖炉等直接熱で干かすと皮革が硬くなったり、変形する場合があります。(ほとんど変形)
次に生干きの状態でソフトのものであれば良く揉みほぐして型をととのえます。
最後に皮革用のクリームを薄めに塗って仕上げをします。
この場合白とかベージュ等薄い色の場合はクリームを塗りますと色がむらになったりする場合もありますので差しさわりのない部分でテストしてから全体に塗るようにして下さい。
牛乳を柔らかい布に浸して拭いてやるのも良い方法です。
靴やカバン等ソフトでない一般の皮革の場合は、半干きの状態よりもう少し干かしてから皮革用クリームを塗ってよく磨き込んで仕上げをして下さい。ほとんどの場合この状態に近く仕上がります。(一般銀付皮革の場合)
 
2.手アカ等、一般的なヨゴレは先ず消しゴムで軽く何度かこすってみて下さい。それでも落ちない場合は皮革用クリーナーで丁寧に拭き取るようにします。
 
3.スエードなど起毛されているものは丁寧にブラシをかけて、やわらか目の消しゴム(専用消しゴムも市販されています)を使うと良い。
又毛足が無くなって来たら紙ヤスリで軽く表面をコスリ起毛させます。スエード用色チョークなどで保色してやるのも良いでしょう。
 
4.エナメル類はぬれた布で拭いて頂ければ大ていきれいになります。
油類がついた場合、専用クリーナー、グラスター(ガラス磨き)等を少々その部分につけて拭いて下さい。但しエナメル以外の皮革には絶対に使用しないで下さい。変色・脱色の原因になります。
 
5.手に負えそうにない場合は無理をせず専門家(クリーニング店・購入したお店や修理店等)にご相談下さい。
 
 厳禁事項
1.皮革製品の皮革そのものも天然のものでデリケートなものです。染色についても同様です。
ベンジン等一般の汚れ落し剤の使用は厳禁です。変色・脱色・変形することがあります。
2.高熱・高温に近づけると皮革を変質させます。70度位が限界です。

・皮革製品は日頃のお手入れが肝要です。ブラッシングやクリーナー等で汚れが少ないうちに手入れすること。毎日同じものを続けて使用しないで時々休ませてやることも長持させるコツです。
・皮革は生きものですから愛情をもって接してやるとそれに応えて使う人になじんで永もちがします。
 保管の方法
皮革は湿気とヨゴレが大きらいです。
・保存するときはまずよくヨゴレを落として保革用クリームなどを塗って手入れを十分にします。
・十分に乾燥された状態でビニール袋に入れ密封して風通しの良い所で保管します。
・ビニール袋の密封が困難な場合は紙・布袋等に入れてタンスの上など特に風通しの良い場を選んで 保管して下さい。
・梅雨時にカビが生えることもありますので一度出して手入れをしてやるとよいでしょう。
・ガーメント等(衣類)は信用できるクリーニングに出すことをおすすめします。
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